第50章 【義妹倒れる】
縁下家では軽く騒ぎになったが実際のところ美沙がぶっ倒れたのは風邪の為であった。寝不足が祟ったであろう事は容易に想像出来る。ともあれその夜は手遅れかもしれないがうつったらいけないからと力は自室に追いやられ後を母に任せる形になった。そうして明くる朝はもちろん美沙は欠席、医者に連れて行かれる事となった。
故にその日男子排球部の朝練にて力は谷地に美沙は休みだと知らせたのである。
「お休みっ。美沙さんどうしたんですか。」
谷地に聞かれた力は答える。
「それがどうも風邪引いたみたいで。」
「ええっ。」
「そういう訳で今日は休み。ひょっとしたらもうしばらくは来れないかも。」
「美沙が学校休みっ。」
ここで日向が早速反応しいつも通り芋蔓式に他の1年も話し出す。
「なるほど、風邪引いたあたり一応馬鹿ではなかった訳ですね。倒れるまで我慢してたあたりは馬鹿だけど。」
「ツッキーってばまたそんな。」
「おい、ままコで馬鹿だったら他の立場がねえだろが。」
「影山どうしたっ、最近コメントがまともっ。」
「日向毎度毎度てめえはっ。」
「おわっ、あぶねーっ。」
影山に蹴られそうになって逃げ回る日向はとりあえず放っておいて2年もやはり黙っていない。
「珍しいな、美沙さんが風邪って。」
成田が言って木下も頷く。
「だからここんとこ何かおかしかったのか。」
「なるほどなぁ、縁下妹が潔子さんのおやつ断るなんておかしーと思ったんだよなー。」
「田中、うちの美沙を何だと思ってんだ。」
「痩せの大食いだろ。」
「田中に言われても否定出来ないのが何かモニョる。」
「縁下、今何つった。」
「そっとしといてくれ木下、間違いなく美沙のせいだから。」
言っているうちに西谷が無駄に元気よく声を上げた。
「力っ、何なら見舞いに行ってやろうかっ。」
「いや万が一お前にうつったら悪いし静かにさせてやって。気持ちだけはありがとう。」
「わかったっ。」
「ほらほらお前ら、いつまでも喋ってないで。」
さすがに見かねた澤村が声をかけ、1年と力達2年は口を噤(つぐ)んで準備にかかる。