第47章 【外伝 菅原の祈りあるいは露見】
「いじわるー、じゃない。もうこんだけ菅原さんに見られたんだから一緒だよ、諦めな。」
言われた美沙は体をぎゅっと縮こまらせ、更に力にしがみつく。
「いい子だね。」
美沙は何か言いたげに力を見る。
「ん、お前はいい子だよ。」
美沙は小さく首を傾げ、しかしまた力にしがみついた。
「わかったみたいだな。」
力はまたよしよしと美沙の頭を撫でる。菅原はただただ見つめるしかなかった。
「何今の、美沙ちゃんひとっことも喋ってないのに会話になってるじゃん。」
「普通ですよ。」
「縁下、お前美沙ちゃんに影響されたなー。」
菅原は面白がってこのこの、と力を肘で小突く。
「普通じゃないっての。どんだけハマったんだよ。」
「少なくとも学校でこんなことする程度には。」
フフフーンと言って菅原はニヤニヤしながら美沙に言った。
「おーい美沙ちゃーん、こっち見てみ。」
美沙は黙って嫌がった。やはり恥ずかしいのか。
「縁下、妹が反抗的なんだけど。」
「美沙、失礼だよ。」
美沙はうーと唸って渋々顔を上げ、菅原を見た。やはり顔が真っ赤で少し頬を膨らませている。女の子っぽくないことで定評のある縁下美沙が明らかに女の子していた。菅原はおおー、と思わず呟く。
「何か安心したわ。」
「どうしたんです、急に。」
「いや、美沙ちゃんもちゃんとこういうとこあるんだなって。」
「何だと思ってたんです。」
苦笑する力にそういうけどさ、と菅原は続けた。
「何かこの子、人前で普通の女の子みたいにするの基本嫌がるじゃん。」
「こっち来るまでは結構無茶苦茶言われてたらしいですから。そうでもしないと保たなかったんでしょう。」
ここで美沙が黙って首を縦に振り、力の言ったことを肯定する。
「じゃあ良かったな、美沙ちゃん。」
菅原は言った。
「縁下んちに来れて。」
美沙はうんうんと頷いた。
「不謹慎ですけど俺もラッキーです。」
力が呟いた。