第34章 【赤葦襲来 第五幕】
「で、原因である妹さんのご意見は。」
「ちょ、私が兄さんをたぶらかしたみたいに言わんといてっ。」
美沙は抗議するが無意味だ。
「たぶらかしたとは思わないけど」
成田が言い、木下がなー、と言い、
「溺愛されているのは確かでしょ。」
赤葦に締めくくられてしまった。
「で、ご意見は。」
「やっぱり聞くんかいっ。」
流石に美沙は敬語もへったくれもなくなる。
「えーと、たまに過保護過ぎる気がせんでもない。」
「たまにか。」
赤葦が呟いた。
「気がしないでもないってレベルか。」
次に木下が呟いた。
「普通なら恥ずかしいとか縛るなとか反抗して喧嘩になりそーなのにさ、」
最後に成田がまとめだした。
「喧嘩したのがいっぺんだけってんだから驚異的だよな。」
成田にオチをつけられ美沙はもう堪忍してと呟き、丁度力が戻ってきた。義妹含む待ってた連中の様子を一瞥(いちべつ)して彼は言った。
「何だかよくわかんないけど聞かない方がいい気がするからやめとくな。」
「う、流石兄さん。」
「成田と木下は後で話がある。」
「俺らかよっ。」
そんなだべりは置いておいてこの後も6人はバレーボールに興じ、日が暮れる頃にそれぞれ別れた。
「じゃーなーっ。」
西谷が驚異の跳躍力で飛び上がる。
「またなー。」
田中が西谷の後を追いながら言う。
「じゃあ赤葦君、もうしばらく縁下頼むね。」
「成田、ちょっと待て。」
「あ、俺からも頼むわ。」
「木下、お前もか。」
「ほな皆さん、また。」
「俺の場合はいつになるかわかんないけど、じゃあね。縁下君は任せといて。」
「もうやめてくれってばっ。」
そうして西谷達と別れた力、美沙、赤葦の3人は並んで帰った。
「面白かったな、兄さん。」
「お前が存外ノリノリだったのが面白かったよ。」
「俺も。」
「2人して何なんっ。」
美沙はまたぷうと膨れた。
次章に続く