第25章 【守りたいのに】

何とか叫びそうになるのをこらえて応対した力だがこれはこれで聞こえていた烏野の連中に衝撃を与えた。特に1年にはてきめんだったらしく、谷地と山口はヒエエエエエエエっと叫び、日向と影山は何で美沙(ままコ)が大王様(及川さん)とウシワカと一緒なんだと食いつかんばかりの勢いで月島はあいつ何か憑いてるのと引きつった顔をしている。一方、力の方は及川にヘラっとした調子でこう言われていた。

「落とし物ひろってもらったんだってー。とりあえず俺もウシワカちゃんも変な事してないから安心してっ。」

されてたまるかと力は思った。特に及川は自分と美沙の現在の関係を知っているはずだ、それで変な事をされてはたまったものではない。自ずと言うことは決まっていた。

「場所はどちらですか。」

力が言った瞬間、成田と木下が出たっと声を上げた。

「えっとねー」

何故か嬉々として話す及川、しかし居場所についてはあっさり告げた。

「はい美沙ちゃん、返すね。」

美沙にスマホを返却したらしき及川の声、ほどなくもしもし、と美沙の大変気弱な声がした。力は言った。

「迎えに行くから及川さん達とそこで待ってて。」

やっぱりかあああっと木下が小さく叫ぶが力はそっちはスルーする。

「いやあの兄さん」

義妹の方も若干の抵抗、しかし力は聞くつもりが全くない。

「待ってな。」

ゆっくり、しかし強く力は言った。

「は、はいいいいいいっ。」

美沙が叫んだところで通話は終了した。

「という訳ですみません、俺ここで別れます。」

スマホを仕舞いながら力は言った。

「えーと、縁下それはつまり」

菅原が珍しく恐る恐るといった様子で尋ねてくる。

「迎えに行きます。」

烏野のメンツはどよめく。

「まぁ今日はひでえ目に遭ってっからおめえがいた方がいいとは思うけどよ、」

田中が言った。