第25章 【守りたいのに】
我が事のように怒る西谷と田中に若干心配したのか力より先に成田が言う。
「気持ちはわかるけど先走るなよ、逆にお前らが悪い事になったら大会に差し支えるぞ。んで美沙さんそれ確実に気にするから。」
西谷と田中はもっともな指摘にうぐぅと唸るが何かモヤモヤしたような顔をする。
「やってきたの噂のあいつだよな、美沙さん大丈夫か。学校来れなくなったりしないか。」
ここで呟いたのは木下だ。
「そっちは大丈夫。」
力は言った。
「階段から落とされた時も前にお前ら巻き込んじゃった時も学校はサボらなかった。それより体の方と父さんたちに隠さずちゃんと報告するかが心配だ。」
言いながら力は内心落ち着かなくなる。美沙が一人で帰るつもりの日に限ってなんということか。いつも自分は肝心の時に義妹の側におらず、義妹は傷ついて帰ってくるのだ。どうしてこうなるんだ、自分は兄貴の癖にちっとも美沙を守れやしない。
「縁下、」
話が聞こえていたらしき菅原がやってきて言った。
「菅原さん。」
「自分を責めるなよ。なんもかんもお前が守るなんてんなの無理だって。お前がそんな事思いだしたら美沙ちゃんそれこそ何かあった時に隠すようになるぞ。」
「そうだぞ、縁下。」
いつの間にか澤村も来て言う。
「今は心配しても仕方がない。その代わり帰ったら可愛がってやれよ。」
「そ、そのさ、美沙ちゃん何気に強いし、親御さんも見過ごしたりしないだろうし、うん。」
「旭っ、言うならもっとしゃんと言ってやれっ。」
「は、はいぃ。」
先輩にも声をかけてもらい力は少し落ち着いた。美沙に何かあるたびこうなるので申し訳ない気もするが今気にするとそれこそ色々差し支えそうな気がした。
そうして部活は何とか終えた。部室に戻って鞄に突っ込んでいたスマホを見ると義妹からとりあえず自分を突き飛ばした奴と一緒に職員室で先生からしばし話があったこと、終わったけど気が落ち着かないから本屋に寄って落ち着いてから家に帰るといった意味のメッセージが入っていた。更にご丁寧なことにこうも書いてあった。
"世を儚(はかな)んでどっか飛び込んだりはせえへんから心配せんといて。"