第25章 【守りたいのに】
縁下力はいつも義妹の美沙が酷い目に遭わないか心配でそれが他校からもおちょくられるレベルでの過保護(すらも超えた)に繋がっている。しかしそこまでしても防ぎきれない事はどうしても出てくる。
「縁下さんっ、ごめんなさいっ。」
その日の部活の時、いつもより遅れてやってきた1年マネージャーの谷地に泣きながら言われて力は大変戸惑った。
「何だ何だ、力もやっちゃんもどーした。」
「縁下、とうとう浮気か。」
「田中さんそれだったら泣くのは谷地さんじゃなくてあの妹の方デショ。」
西谷、田中、月島が好き勝手を言うが力はそれどころではない。
「谷地さん、急にどうしたんだ。」
「わた、私の、私のせいで」
谷地は震える声で言う。
「仁花ちゃん、落ち着いて。」
清水がそっとフォローし、谷地はエグエグとしながら力に言った。
「私のせいで、美沙さんがっ、怪我しちゃいましたっ。」
力は固まり、谷地はここでうわああああんと泣き出した。普段場を弁える谷地がこれだ、ただ事ではない。清水に背中を撫でてもらいながらもなかなか涙が止まらない谷地に力は穏やかに問うた。
「谷地さん、詳しく教えて。」
しゃっくりをしながらも谷地が語った概要はこうだ。谷地は部活に来る途中、不良で通っている面倒な男子生徒に絡まれた。そこへちょうど自分も帰ろうとしていた美沙が割って入った。相手が興ざめしてそのままひいてくれれば良かったのだがそれだけではすまなかったのだ。
「その人、美沙さんの、こと、突き飛ばして、」
思い出すのが辛いのか谷地は途切れがちに言った。
「おまけに蹴っ飛ばして」
力は久しぶりに全身の血の気が引いた心持ちになり、話が聞こえていた田中と西谷がなんて野郎だといきり立つ。
「でも、美沙さん、私に先行けって、構わずにって。」
ヒックヒックとしながら谷地は語る。
「私、近くにいた、せんせ、呼んで、きました。美沙さんとその人は先生と一緒に行って、私は、もう、こっち行っていいって言われたから、う、来たけど、でも、美沙さん、顔擦っちゃって、足蹴られて、あっちこっち打ってて、立つ時も凄く痛そうで」
ここで谷地は両手で目を覆い、俯く。ぼたぼたと溢れる涙、清水が背中を撫で続けて泣かないで仁花ちゃんと言う。