第24章 【合宿 終幕】
美沙は玄関に置きっ放しだったバッグを非力ながらも何とか二階に持って上がり、届けてやろうと義兄の部屋にやってきた。ドアをノックしてみるが返事がない。
「兄さん。」
今度は強めにノックし呼びかけてみるがやはり返事がない。
「もー入るで。」
美沙は言ってバッグをずりずり引きずりながらドアを開けて義兄の部屋に入る。
「ありゃま。」
義兄の力はベッドに倒れこみ眠ってしまっていた。
「お疲れなんやね、無理ないけど。」
義兄を起こさないよう美沙は小さくひとりごちる。とりあえずバッグを机の側に置いておき、力の体に掛け布団をかけてやろうと思う。が、ふと眠る力の顔を見て美沙は久しぶりに魔がさした。
「兄さんには悪いけど、なんか可愛い。」
呟いて美沙はそっと義兄の顔を覗き込み、その頰に口付けをした。ついでにそっと髪を撫でてみたが、自分からやっておいて急に恥ずかしくなり手を止める。後でバレたらどないなるやろと思いながら部屋を出ようとした時だった。
「ふぎゃあああっ。」
叫び声が上がった。美沙は眠っているはずの力の片腕にとっ捕まり、そのまま布団の中に引きずりこまれたのだ。
「兄さん、起きてるんっ。」
美沙は言って義兄の顔をみるが力は明らかに眠っている。とりあえずこれはまずいと思い美沙はジタバタするが例によって非力な動画投稿者は筋肉質の野郎の腕を解くことが出来なかった。
「兄さんあかんって、起きてー、離したってー。ちょお兄さーん。」
美沙がいくら声を上げ身じろぎしても眠ったままの力は起きてくれないし離してくれない。
「ちょ、どないするんよ、もー。」
美沙はため息をついた。
「お父さんもお母さんも今いてはらへんからええけどさ、帰ってきはるまでに私こっから出れるんやろか。」
結局美沙はそのまま2時間ほど自分も半分眠りながら力の腕に拘束されて過ごす羽目になった。幸いだったのは義父母が帰ってくる前に力が目覚め、自分が寝ぼけてやらかした事に気がついてごめんホントごめんと平謝りしてくれた事だった。