第5章 悪役令嬢の憂鬱【黒尾 鉄朗】
『ん〜……』
どれくらい眠っただろう…
目を開けると
私の寝室の天井があった。
「気がついたか…?」
私の顔を覗き込む愛しい人
『鉄郎様…//』
「わるい…無理させたな…」
私の手を握って
バツの悪そうに笑う。
私はその一言で
色々と思い出した。
『あっ…///』
熱くなる顔。
それを隠そうと
布団を顔まで上げようとすると、
「おい…隠すなよ…」
と遮られてしまう。
『っ……///』
(うぅ…顔ちかいっ……//)
「もう…何も隠すな…//」
私は夢を見て思い出した
ゲームの中の〇〇の記憶
でも、それも私の記憶となった
『私…思い出しましたの…
昔、鉄郎様が私に言ったこと…』
「ん?…なんだ?」
突拍子もない語りに
驚いて首を傾げる鉄郎様。
『"俺以外の前では可愛くなくしろ"
そう言われて…
私、一生懸命可愛くなくする練習をしたんです。』
「…!」
『それで、こんなに可愛げのない女に
なってしまったのです…』
「……いや、練習って…
しかも俺以外ってちゃんと言ってるしね?」
突然の告白に
あたふたする鉄郎様
『そっ、そんな器用なこと!
…できなくって……
それで……』
正論をかまされて
目を逸らす私
「も、もしかして、
可愛げないって言ったの
結構根に持ってる?」
頬をポリポリとかきながら
目を逸らす彼。
『………はい。』
だって、それが原因で
白鳥麗子に取られたと思ってるもん。
「っ……//
はぁぁ……
それはほんとにごめん。
リエーフとすごく親しそうにしてたから
正直嫉妬してさ……//」
頬を染めて
私を見つめる彼の瞳に嘘はなかった。
『だっ、だから…
ちゃんと責任とってください!』
振り絞った声で
ようやく思いを伝えられた。
「っ///……
あぁ。責任取るよ…//」
鉄郎様はそう言って
強く私を抱きしめた。
ゲームにはない
ハッピーエンドだ。
*終わり*