第8章 風邪【佐久早 聖臣】
ドキッ!
私は咄嗟の出来事には反応できない
人間のようだ。
ビクッとすることも無く
私の肩は彼の頭を受け入れた。
(どっ、どうすれば……;;;;)
冷や汗の止まらない私を他所に
寝息を立てて眠っていらっしゃる佐久早さん。
暫く時の流れに身を任せてみたものの
全く起きる様子のない佐久早さん。
けれどこの時はやってくる。
「次は--」
車内アナウンスが流れ
ハッと我に返る私。
(次、佐久早さんがいつも降りる駅じゃん!)
二択が迫る。
1つは『次降りる駅ですよね?』と、起こしてあげる。
ただし、これは(え?なんでコイツ
俺の降りる駅知ってんの?キモ…)
って思われる可能性大!
あんまりやりたくない……
もう1つは自分の降りる駅まで肩を貸し
『あの〜…降りたいんですけど…』
と、声をかけて2人で大学前の駅で降りる。
(うー、どうしよ。)
**
数十分後
「ん〜……?」
佐久早さんが目を覚まし
自分の状態に気がついて
ガバッと体を起きあげる
『え、えっと………』
「あ、…え…と……
あれ?俺…?
ス、スイマセン…//」
驚きと恥ずかしさとが
混ざったような表情で声をかけられ
『い、いえ……
あまりにも気持ちよさそうで
起こせなくて…///
こちらこそ、ごめんなさい…//』
私は自分の優柔不断加減に
恥ずかしくなり、俯いて謝罪した。
すると、
謝罪の意味が分からなかったのか
「……?」
キョトンとする佐久早さん。
ドアの上のモニターに移された
《次は〇〇》の文字を見て
「………!!!?」
と、驚きのあまり
固まってしまった。
そう。
私たちは大学の最寄り駅から
10駅も離れた場所まで来てしまっていた。
結局二択はどちらも選択できず
【起こさない】という
3つめを選択をしてしまった。
私達はその駅で2人で下車し、
戻ろうか考えたが、
隣のホームの満員の電車をみて
「俺は乗らない。」
という佐久早さんに同感して
サボることにした。