• テキストサイズ

古きパートナー

第11章 赤


白川側

眠い、だけど眠りたくない

あの夢を見るのは怖い

無力な自分を何度も見たくない

体が熱い

ベットに腰かけている仁王君の声は途切れ途切れに聞こえるのに

ベランダから聞こえる雨の音がよく聞こえる

時々、救急車のサイレンが聞こえるのは幻聴かもしれない

息が苦しい、頭が痛い

意外と重症かもしれない

今までと同じだと思っていたんだけどな

こんな事を考えている自分が重症かもしれないな

瞼が重い、眠りたくない

仁「そんなに寝たくないんか?」

『...はい』

仁「怖いんか?」

『こ、わい?』

仁王君を見れば辛そうな苦しそうな表情をしている

仁「聞いてもええか?なんで雨が怖いんか?」

『友達が死んだ日。ビルの上から、飛び降りた。トマトみたいに潰れて、赤い水溜りが広がった。僕が、殺した。アリィを、殺した』

仁「もうええ。すまんかった」

『いえ...』

話すと楽になる、と言われているが

何故だろう、今心が軽くなった気がする

仁「一緒に寝てもええか?」

『?、眠たいのですか?』

仁「そんな感じじゃ」

『汗臭いですけど、それでもよろしければ構いませんが』

仁「気にしん」

布団に入ってくる仁王君の体は冷たかった

否、僕の体が異常に熱いだけだ

仁「温かいのう」

『普段は仁王君よりも冷たいですよ』

仁「そうかのう」

『低体温なので』

仁「...雨、止まんな」

『そうですね』

仁王君が何を考えて病人の隣に入ってきたのかわからないが

彼には何時もお世話になっているので

自分が叶えられるのであれば出来るだけ彼の希望を叶える

僕の希望なんか二の次でいい

優真や皆さんの希望が第一だ

仁「これなら聞こえんじゃろう?」

『え...』

仁王君が急に僕を抱き寄せてきた

仁王君の胸からは少し速い鼓動が聞こえてくる

雨の音なんか聞こえない

仁「俺がこうしといてやるき。今のうちにしっかりと寝るんじゃ」

『しかし、仁王君が...』

仁「今日くらい自分を大切にするんじゃ。いいな?」

『...わかりました』

暗い部屋、湿気のある部屋

何時もは怖くて眠れないのに

彼の鼓動が心地よくて、彼の香りが心を癒して

こんな自分に優しく接してくれる人なんて今までいなかった

むず痒いのかな、今、幸せを感じてる
/ 309ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp