第10章 知らないフリ
仁「それでも、もっとええ方法があったはずじゃ」
『優真への対抗心もあったのです。負けたくないと言う物が』
仁「じゃからと言って」
『いつもの事です。優真が右利きだから右で打ち合うだけですから』
仁「...なら、俺は左利きだから左で打つんか?」
『そう言う事になります』
仁「お前さん、何処までも馬鹿じゃな」
『...そう言われるのは優真を含めて3人目ですね。懐かしいです』
仁「3人目?」
『ええ、前の学校で言われました』
前の学校、つまり中学の時か
『あの時も、こんな感じでしたね。勝手に家に入り込んで、腕を引っ張られ、今みたいな話をして、結論「馬鹿」とこじつけて、懐かしいですね』
仁「今、ソイツはどうしとるんじゃ?」
『...もう、いません。他界しました』
仁「!、...すまん、知らんを言い訳にするつもりは」
『良いんです。知らなくて当たり前ですから。寧ろ知ってたら問題ですよ』
仁「そうじゃが」
『終わった事です。彼女の葬式に出られなかったのは残念ですけどね』
仁「そうか」
俺は何を聞いとるんじゃ
コイツのトラウマはただでさえ深いのに
なのに
『僕は幸せを貰いすぎたんです。だったらその幸せを貰った分は返さなければなりません』
仁「それは、自分の身に何が起こってもか?」
『はい。僕の「罪滅ぼし」は始まったばかりです。無理して死なない限り、僕はその行為をやめません』
お前さんの過去に何があったんじゃ
聞きたい事は山ほどある
じゃが、此処で聞くのはやめておこう
優真がついておらん白川は素直に全てを話すじゃろう
俺は白川の素直すぎるのが許せん
母親に嘘をついた時も自分を責め
優真を守ろうとする心掛けは誰よりも強く
自分自信を隠して戦う
もっと弱くてもええんじゃ
お前さんはもっと甘えてもええんじゃよ
甘えを知らんのか忘れたのか、はたまたしないだけか
こんな綺麗な顔は無表情を貫き
女性にしてみれば低い声で優しい言葉を紡ぎ
異常までに姿を隠すその体に
一体何があったんじゃ?
『仁王君、ゲームをしませんか?』
仁「ゲーム?」
『はい。ゲームと言ってもクイズに等しいですが』
仁「内容はなんじゃ?」
『簡単ですよ...』