第9章 9話
私が部屋を軽く掃除していると赤司がまた家に戻って来た。私が立って掃除機を掛けているのを見て心配そうに声を掛けて来る。
「もう大丈夫なのか?」
「さっき熱を測ったらもう平熱まで下がり切っていたから大丈夫でしょ。」
「無理をするな。」
私が掃除機を掛け終わりソファに腰を降ろすと赤司も私の隣に腰掛け、持ってきた太い本を読み始めた。
「うん。…そう言えば、いつまで赤司はこっちにいるの?」
「明日の昼にはこちらを出るよ。実質今日が最終日だな。」
「そっか………ねぇ、出かけない?」
私の質問に赤司は持っていた本に栞を挟みパタンと閉じた。
「そうだな。…でも身体は大丈夫か?」
「大丈夫だってほんと心配性何だからー。ほら、屋内ばっかだと白くなる一方でしょ行くよ!」
「あぁ。…いや家でも良いんじゃないのか?」
「はぁ?あ?いや、ちょっと!!」
私はソファに一瞬のうちに追い詰められた。両腕を掴まれソファに沈められる。自然と私の上に乗り上げて来る赤司から逃れようと身を捩るも体格差のせいでその抵抗を難なく抑え込まれる。
「俺は山吹と今までの分の時間を取り戻したい。」
赤司は私の耳に唇がくっつくぐらい近づいて囁いてくる。近づいた赤い髪が私の頬をくすぐる。
「下心見え見えですよ赤司くん。」
「よくご存知の様で。まぁ下心が無いとは言い切れないがそんな積りはないよ。俺は山吹とゆっくりしたい。」
「…前行った公園にバスケのコートとゴールがあるの。行かない?」
私の言葉に赤司の身体がほんの僅かだがピクッと動いた。
「私もバスケやりたいなって」
返事を聞かなくてもわかる。赤司はやりたくてうずうずしている。
「今日は家の中にいよう。」
「本当はバスケしたいでしょ?私を心配してくれるのはわかるけど、私はそんなに弱くなから。…もっと近くで赤司のプレー見たいなぁ。」
私の言葉に赤司は口を閉ざしてしまった。つい昨日初めて負けを知らされた原因と向き合え、なんて残酷な事を言っているつもりではない。第一赤司はそんなやわじゃ無いことは知っている。元気付けようとかそんなんじゃなく、ただ赤司のプレーを近くで見たいが為の自己満足。
私は大好きな人が大好きな物で輝いている姿を見るのが1番好きだから。