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続・厄介な天帝さん

第8章 8話


そして迎えたウィンターカップ当日。

開会式後に予定していたミーティングを緑間くんが席を外すということで心配になった高尾君のお使いとしてこっそり派遣された私は緑間くんの後を付けていた。

緑間くんは異常に慎重が高いだけあって目が悪い人でも割と見つけやすい。
その為か後を付けていても全くもって気づかれなかった。

彼の行き先はウィンターカップ会場の入り口前の階段だった。私は階段の塀の影になるように隠れ彼の様子を見張っていた。
すると、中学時代によく見知った黄色、青色、紫色、そして黒色と愉快な頭の色をした仲間達が続々と現れた。彼らは集まると早々に口々に何か話しているようだがその会話があまりに自由すぎて私は頭を抱えたくなった。

そういえば、肝心のあいつがいない。

私がもっと近づいて見ようとした時だった。
まさに今探していた人物が私の横をすり抜けた。塀が高かったのと彼の死角になったのか見えていないようで安心した。

だが、それも一瞬のこと私と壁を挟んだ向こう側は穏やかな再開ムードではなかった。
一体何があったのか、私が頭を出して向こう側を確認しようとした矢先声は突然後ろから聞こえた。

「盗み聞きとはいい趣味をしているな。」

氷のような冷ややかな声だった。

赤司「まさか、あれで隠れているつもりでいたのなら随分と笑えた冗談だ。が、真太郎は気づいていなかったようだね。」

私が恐る恐る振り返ると青空によく映えた燃えるような赤色が立っている。
腰に手を当て、口角を上げて目を細めているが瞳が笑っていない。

私「何か用?」

緊張で震える声と手を必死で押さえ、敢えて素っ気なく言い放った。

赤司「これと言った用事はない。強いて言うならエールでも送ってやろうかと思ってな。」

赤司は位置的にも高い目線なので私は見下して話す。その圧倒的立場の差に対等であったあの当時を連想してしまった。
頭脳も能力も桁違いに広い彼の事だ、私が一矢報いる事が出来ない事が素直に悔しかっただから、

私「どうせまた踏ん反り返っているだけなんでしょ?せいぜいチームメイトに愛想尽かされないようにしなよ。」

言ってしまってから口を抑えた私を赤司は軽く睨みつけ、何か言い返そうと口を開きかけたが開くことは無く、私を悲しそうな目で見るとその場から静かに去って行った。

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