第7章 7話
私と話していた事が聞こえていたのか高尾君は顔を引きつらせたり緩ませたり、忙しそうだった。
私が軽く手を振れば軽く息を吐いて目を閉じ、強い眼差しで私を見ていた。
それを見ていた緑間くんを視界の端で捉えると彼は口元に軽く孤を描いていた。
ぴっぴー
ミニゲームの為にセットされたアラームが終わりを告げた。それを見計らったように大坪さんが大きな声をだした。
大坪「今日はここまでだ!片付けをしろ。」
大坪さんの声はいつもより厳しい声に聞こえた。
大坪「緑間、今日は居残り練習を極力控えろ。お前も本気なのはわかっているから絶対とは言わん。だがな、明日からはお前の力が重要でありチームの勝利を左右することにお前自身が大きく関わっていることをよく理解しておけ。…俺たちに次の冬はもう無いんだ。」
大坪さんが緑間くんに話した内容の最後の部分はよく聞こえなかったけれど、それを聞いた緑間くんが眉間に皺を寄せて複雑な顔をしていたので大体察しはついた。
高尾「真ちゃんも本気なんだよな。」
私の隣に突然高尾君が立ってそう言った。そういった彼自身にも当てはまったようだ。なぜなら彼の汗でベタついた顔と力強い目が全てを物語っていたから。
私「高尾くんも無理しちゃ元も子もないからね。」
高尾「ありがとな!これでも自分の限界ぐらいわかってっし、俺って結構タフだしな!!」
宮地「おい、高尾さっさとモップ掛け行けよ埋めんぞ!!」
高尾「すません、今行きまっすー。」
高尾くんの後ろを追うように私も他の先輩たち同様モップを掛ける為に体育館の舞台裏に走った。
片付けが終わり解散した後、今日は念入りに指先の爪のチェックを入れている緑間くんを高尾君と2人で待っていた。
いくら自主練をしないからといって爪なんて1日やそこらじゃどうもならないと思うんだけど、と悪態をつきながら待つことかれこれ10分。
緑間「さっさと帰るのだよ。」
出てきて早々偉そうな事を言った上、人を待たせた割には謝りの言葉すら入れず何時もの調子の緑間くんに多少は面食らったものの逆に和んでしまい私と高尾君は自然と笑ってしまっていた。
緑間「何がおかしいのだよ。」
当の本人は無自覚だったようだ。
私「いや、いつも通りで何にもおかしくないよ。」