第6章 6話
赤司はいくらか穏やかな表情とオーラを纏っていた。
彼は私の顎から手を話すと私の背中に手を回し、肩に顔を埋めた。
赤司「俺は守るべきチームメイトも心もみんなみんな俺から離してしまった。嫌だったし、苦しい辛い。けど、もう取り戻すことなどできやしないとわかっている。いつだってそうさ、俺が守り切れたものなんて……だから、山吹だけは譲りたくない。誰にも、自分にもだ。」
こんな赤司の弱音を吐いている姿を見て少なからず私は動揺していた。
幼い子の様に私にすがりついてくる彼は何かからのがれている様に見えた。
そんな一回り大きな淋しい背中に出来るだけそっと壊れものを扱う様に片手で触れ、頭をもう一方の手で撫でた。
私の感情はぐちゃぐちゃ、というより混乱していただけだった。
こんな彼の姿は見ていられない、つらい。
私が彼に言葉をなんてかけようか迷っていた時だった。
「お前らなにしてんの?」
後ろでとげとげしい声が私たちに刺さった。
その声の主は高尾くんだった。
私は咄嗟に赤司から手を離し距離を取ろうと赤司の肩を押そうと手を伸ばせばその手を赤司が掴んだ。
私の手を引っ張り私の顔を自分の胸に抑える様に抱え込んだ。
その時に一瞬だけ見えた彼の瞳は赤と黄色に見えた。
赤司「悪いが取り込み中だ、部外者は速やかにご退出願おうか。」
赤司の言葉が耳元で囁かれている様に聞こえて耳がくすぐったい。同時に掴まれたままの腕はそこだけが異常に熱く、脈が早くなっていた。
高尾「意味わかんね、てかお前は山吹ちゃんのただの幼馴染だろ?前会った時は彼女とか言ってたけど、本当は違うこと俺知ってんだぜ。」
赤司「だったら何だ。」
高尾「何だって、何だよ。つかいい加減に離れろよ。」
そう言うと高尾くんは私をひったくる様に赤司の腕から引っ張った。
赤司「君は山吹の何なんだ。」
赤司は至って冷静に言ったが、声は幾分か低く話したのを聞くと結構イライラしている様だった。
高尾「何って…俺は山吹ちゃんの彼氏なんだけど。」
赤司「そんな嘘が通用するものか」
高尾「嘘じゃねえ。なんなら山吹ちゃんにも確かめてみろよ、もうお前に俺ら邪魔する権利ねんだわ。」