第6章 6話
周りはいつの間にか生い茂った木々で覆われている。
急ではない斜面の下り坂だろうかその途中に座り込んでだ。
それから、ずっと気にする余裕が無かったが耳をすませば微かに聞こえる虫の音に耳を傾けた。
落ち着くようで、まだ不安はある。
とりあえず携帯を確認すれば画面の左端に圏外と表示されたのを見て歩く気力も体力もこの闇に根こそぎ奪われた。
そのままゴツゴツした砂利の上に寝転べば空の星はよく見えた。広い空は何も隔てる事がなく、都会の狭苦しいビルで狭まったそれとは大きく異なり開放感があった。
その感覚に懐かしさを覚えた。
小学生の夏、8月中旬の事だった。
私の一家と赤司とその母とで田舎の山奥に何泊かの泊りに来ていた時だった。
きっかけは赤司の母の兄、つまり赤司からは伯父さんにあたる人の所有地にて新たに一般向けキャンプ場を開設するとか何とかでその開放に向けての試験を赤司の母が頼まれたそうだ。母親同士の仲が良かった事もあり、そこのキャンプ場に誘われて行ったことがあった。
あの日も丁度今日の様に晴れていた。
私「せいくん!ガンバロー楽しみだね〜!!」
赤司「かえでちゃん、バンガローだよ。」
私「どっちでもいいのー!!」
幼いとはいえ今よりも100倍は仲の良かった私たち。
その仲の良さは赤司の母が生前だったことも関係があるのかもしれない。何故なら、その頃の彼は今程冷静に物事を判断すると言うよりは何に対しても積極的な行動派で好奇心旺盛な私と一緒にわいわい騒いでたこともあったからだ。
とはいえ、もちろん私たちの仲でも毎日喧嘩をしていた。
それはその日の夜もだった。
私「せいくんー!!バーベキューするんだって!!お母さん達の用意できるまで、また遊ぼうよ。」
夕日に包まれ、散々山の中を駆け回っていたが遊び足りない私だった。
赤司「ご飯が先だよ後でね。」
私「えー!!今がいい!!暗くなったら遊べない!!」
母「かえで我儘いわないの!征ちゃんの言う通りよ。…そんなに遊びたいなら母さん達のお手伝いしてからね!」
その言葉に渋々と言うよりいやいや頷いた私はとても機嫌を悪くした。
食事中もなかなかイライラが収まらず、幼い私は仕返しの意味も込めて赤司に悪戯をした。