第5章 5話
段数と高さで私の体力消耗が恐怖を抑えていた。
2、3段目くらいからペースを落とし始めた私に合わせてくれていた黒子くんも手には汗で繋いでいると何度か滑った。
黒子「あと5段。と言ったところでしょうかお墓が見えてきましたね。」
黒子くんはまだ息を切らしていないのか周りを見る余裕があるらしい。
ちなみに私に周りを気にする余裕なんて全くない。
そういえば高尾君は何やってんだろ。
列の先頭の方だったかな。
黒子「山吹さん、そろそろですよ。」
ゆっくり階段を上ってはいたが割とペースが早かったのかもう次の段はなく開けた道だ。
私達を待っていたようにお墓が見える。
私「黒子くん、腕はもう組まなくていいけど手は繋いだままでいい?」
そう言うと黒子くんは頷く代わりに私の前にそっと手を出してくれた。
手をつないでゆっくり歩き出した私達に待ち構えていたのは薄暗い鳥居だ。
奥に進めば進むほど足場が悪くなる上に暗い。
申し訳程度にある外灯も蛍光灯を交換していないのかさっきから点滅を繰り返している。
私はさっきの階段時の元気は嘘のようにただただ体を震わせていた。
手を握っているはずの黒子くんは周りの空気と化して2人いるはずなのに1人っきりになったようで頼りにならない。けれど、それが私の心を何とかその場に留めてくれる精神安定剤だった。
そんな時だった。
「う〜ら〜め〜し〜や〜」
突然、私の耳元で囁かれた声に驚きのあまりパニックになり声を上げることも忘れて猛ダッシュをしていた。
私「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
高校に入って初めて本気で走った気がする。
体はいきなり走った成果尋常じゃないほど汗をかいていた。
息も切れるし動くのも辛くなってそのままその場に座り込んだ。
数分息を整えると頭も冴えてきた。
ここ、どこだ。
私の目の前は真っ黒だけど空には星と月明かりで明るい空のお陰でどういう所にいるかはわかった。
とりあえず森の中に入ってしまったらしい。
動き回るにもさっきのパニックのせいでどっちから来たのかわからないし何よりしんどくて足が重たい。
何処かで足を捻ってしまったのかものすごく痛い。