第3章 3話
「中学卒業以来か、山吹久しぶりだね。」
中学の卒業式以降まともに口を聞いたのはこれが初めて。再会の嬉しさと懐かしさに涙が落ちそうになった。
私「なんでここに赤司がいるの?」
赤司「今日から東京遠征でこっちに来ている。明後日には帰る予定だ。」
私「明後日!!早いね、もうちょっとゆっくりしていけばいいのに。…」
赤司「東京へは遊ぶ為に戻ってきたわけではない。ゆっくりなんて悠長にしている時間があるなら今日にでも京都に帰るべきだと僕は思っているんだけどね。」
普通に会話してるつもりなのに何でかな、彼の心は遠すぎる。
ただでさえ東京と京都という距離なのにな。
目を見たって彼の左右で違う色の目は氷の様で冷ややかに私を見ている。私の左肩に乗っかったままの右手に熱を持ってるのが不思議なぐらい。
高尾「山吹ちゃん、そいつとはどういう関係??」
私たちの何とも言えない空気に高尾君は耐えかねたのかそう尋ねてきた。
私「私達は恋人関係ではないよ。ただの幼馴染なのかな?」
そう答え、赤司の方を見た。
私をまっすぐ見つめている。
何を考えてそんな事を口走ったのかさっぱり意図は読めない。だけど事実上は私の言ったことで大体は合ってる。少なくとも今ここに存在している赤司征十郎はそう思ってるだろうし、私だってそうだ。
高尾「…でもやっぱ駄目、俺と帰ろ山吹ちゃん。」
赤司「何を勝手なことを言っている。そもそも君は体調が万全でないんだろう?ここは素直に引くべきじゃないか」
高尾くんは赤司にそう告げられぐうの音も出ない。
だけど高尾くんは一歩も引かなかった。
高尾「事情は知らねえけどお前といると山吹ちゃん悲しそうな顔すんだよ、そんな顔させている奴に任せられかっての!」
そう言って私の右肩の上の手をあからさまに払いのけ私の手を引こうと手を掴んだ。
が、その手は私の目の前で払われ、一瞬で高尾くんの指が曲がってはいけない方向に曲りかけていた。
高尾「いて……ててて…いてーってちょ、お前!!」
その指を握っている本人は冷徹な目で高尾くんより身長が低い筈なのに見下すようにじっと彼の顔を見ていた。
赤司「僕の命令は絶対だ。今度そのふざけた態度を取ってみろ……わかったな?」
冷徹で静かな囁きは私達にしか聞こえない筈なのに、周りをも征していた。