第1章 第一章 一部
「よお、遅かったな」
遅れてきた俺達に、厳つい顔をした男が声をかける。地元じゃ名の知れた悪人、高松哲二(たかまつてつじ)さんだ。
高松さんは地元の不良を総嘗(な)めするリーダー的存在。黒いソフトモヒカンに龍の反り込みが入った頭を見ただけで、地元の不良なら誰もが彼だと分かる。
「すいません、補習があったんで──」
「あ? お前らまだ学校なんか行ってんのか?」
言い訳染みたように答えると、高松さんは馬鹿にしたように笑った。
「だせえ」
それにつられて、先に来ていた同じ年代の仲間が笑う。
仲間の中には同じ学校の奴が何人かいる。その全ては、ついさっきまで一緒に補習を受けていた。
(お前らが言うなよ)
とは思ったが、
「ははは……」
高松さんがいる手前、笑顔を取り繕う。
変に怒って高松さんを怒らせたら、後々面倒な事になる。だから、嫌でも笑うしかなかった。