第1章 第一章 一部
学校が終わっても、俺たちが真っ直ぐ家に帰ることはまず無い。かといって、金のない俺達が遊ぶ場所なんて限られている。
だから、俺達が行く先はいつも同じ場所。廃墟と化した病院だ。
昼を感じさせない薄暗い建物の中。電気も水道も通っていないこの場所を照らす唯一の明かりは、どこかの材木置き場から盗んできた作業用の小さいランプ。それでも、遊ぶ分には充分すぎるくらい明るい。
しんと静まった辺り。どこからか、ポタリポタリと水滴が落ちる音が聞こえてくる。昨日雨が降ったせいで、屋根に溜まった水が滴り落ちているのだろう。
この建物はかなり老朽化が進んでいるからそれは仕方のない事。
壁のいたるところにはヒビが入っていて、扉は錆びだらけ。鉄骨は剥き出しの上、ガラスは割れ放題。おまけに色んな生物が住み着いている。
俺が幼い時に、この病院は廃業したらしい。潰れた経緯はいろいろとあるようだが、詳しくは知らない。
今ではこの病院も、地元の奴なら誰でも知っている幽霊スポットとなり落ちた。様々な亡者が出るなどと噂されているが、そんなのは真っ赤な嘘。
人を近づかせないようにするため、先輩達が流したデマだ。