第3章 第一章三部
最近誘拐などの事件が多いせいか、廃墟の前の道をよくパトカーが通る。その為、溜まり場の近くに車を止めておく事が出来ず、わざわざ団地の駐車場に止めて、そこから廃墟まで歩いて行かなければならなかった。
団地から廃墟まではの距離は、それほど遠くない。しかし、携行缶を持って歩くとなると、話は別。
いつもはなんてことない距離が、今日は遠いいように思える。
「さっさと歩け」
俺の数メートル先を歩く男は、携行缶を持ってくれるような親切な人ではない。のそのそと亀のように歩く俺と太一に、彼は顔をしかめて言った。
散々扱き使われた挙げ句、休む暇さえ与えられない現実。
日付はとっくに変わってしまっている上、身体中は汗でベトベト。
『こいつを殺して家に帰ろうか』
そんな考えが浮かぶ俺の頭は、かなり異常をきたしている。
ヴヴヴ──ヴヴヴ──
木々に囲まれた坂道を上っている途中、ズボンのポケットに入れてあった携帯電話が大きな音を響かせながらブルブルと震え始めた。
突然の出来事に驚き飛び跳ねる肩。辺りが静かだった為か、その音はかなり心臓に悪い。