第2章 第一章二部
「や、やだよ。……俺も行く」
肝が小さい太一は一瞬だけ言葉に詰まっていたが、決心したように俺の背中を追う。
「なら、早くしろよ」
太一より数歩前を歩く俺は、わざと後ろへ振り返るような真似はしなかった。
もしここで振り返りでもしたら、間違えなく俺は親友の手を取って逃げてしまうだろう。
太一と一緒で、俺も肝が小さい方。だから、ますます振り向くわけにはいかないのだ。
「ち、ちがいます!! 俺じゃなくて本間が──」
廃墟の玄関口の手前へ差し掛かった頃。ガラス張りの透明な玄関扉が、悲鳴混じりの声と共に勢いよく開いた。
出てきたのは、先に溜まり場へ行った筈の恭輔。俺の名前を叫ぶ恭輔は、頭部から血を垂れ流している。
「“ホンマ、ホンマ”うるせえよ!! こっちはなあ、オメェのおかげで服が濡れたんだぞ、コルァ!!
──いっぺん死ぬか? 死んでくるか? あ? あ?」
後から出てきたのは、血の付いた細長い角材を握りしめた高松さん。
酷く腹を立てた高松さんは、何故か上半身裸だ。