第14章 若輩もの
自分の気持ちが発覚したあの日以来、私たちは以前の平和な日々を取り戻していた。
隼斗くんからの告白は次の日にきちんとお断りした。また、彼は椎の存在は誰にも言わないと約束してくれた。
「ま、諦めたつもりはないから、気が変わったらいつでも言ってよ。」
なんて言われて、少し戸惑いはしたもののいつもと変わらない彼に安心した。
まだ、椎については詳しくは話せていない。けれど、いつか椎のこともちゃんと話せたらいいな、なんて都合のいい考えも持ってしまった。
『ん…お腹空いた。』
そして今日は休日である。いつもより少し遅めの起床。毎週のごとく特に予定はない。
_______________ガチャ
「あっ、絵夢おはよう。」
『ん…おはよう。』
すっかり彼の定位置となったキッチンからは朝食のいい香りが漂ってくる。
当番制にしようと提案したものの、居候の身だからと今でも家事は全て彼が担当している。
(ほんといい匂い。)
居候と言っても、アルバイトを始めた彼は毎月食費の半分を払ってくれている。さらに、家賃や光熱費も払うと言ってきたが、私がそれを断ったのだ。
家賃も光熱費も自分一人で暮らしていた時とそう変わらないのに彼から金銭を受け取るのは気が引ける。
「これ、テーブルまで運んでくれる?」
『うん、わかった。』
彼が家事を譲らない理由は、他にもあると言っていたが詳しくは聞いていない。
まぁ何はともあれ、彼と過ごす穏やかな時間は私にとってかけがえのないものとなっている。
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「ねぇ…絵夢。」
『ん?』
朝食を済ませた後、ソファに座り雑誌を開き、流れるニュースに耳を傾けていると椎がキッチンから出てきた。彼は私に声をかけると、ソファを背もたれにするようにして床に腰を下ろす。
『どーしたの?今日なんか予定あったっけ??』
私の名前を呼んだきり黙り込んでしまった彼。どうしたのだろうかと顔を覗き込もうと少し身をかがめる。