第1章 拾いもの
見つけてしまった。何が起きているか、そこに何があるか、全く把握できていないがどうしても『彼』から目が離せないのだ。
おそらく年齢は自分より、1つか2つ下であろう。白く細い髪に透き通るほど白くきめ細かい肌、そしてルビーをそのままはめ込んだような真っ赤な瞳。
男性にしては華奢な肩は寒さのせいか小刻みに震えている。私は無意識のうちに彼の頬へと手を伸ばした。
『……っ!えっと…風邪引きますよ?お家、どこですか?』
自分でも自分の行動に驚き、とにかく何か話さなくては、と固まりかけた頭をフル回転させる。
「…………。」
しかし、その努力も虚しく彼は眉一つ動かさない。目の前の彼とは確かに視線を交えているはずだが、彼の目がうつろなせいか、いまいち彼の表情を捉えることができない。
『あ…あの、お家の住所とか…。あっ、もし他人に知られるのが嫌とかだったら警察か役所にでも…』
「…………。」
どうしたらよいのだろう。特に偽善者ぶるわけでもないが、何も答えないからと言ってこの寒さの中彼を放って帰るのはさすがに非情だろう。というより、それはそれで彼が気になっていつもの生活に異常を来す。
『あっ、スマホとかあります?多分地図機能とかついているはずだからそれを使えばっ______』
_____ギュッ。
『へっ…?』
「……俺ね…行く宛…ないんだ……」
声を色で例えるなどおかしな話だが、彼の声を色で例えると白だ。白と言っても限りなく透明に近い白だ。
透き通るような声色に気をとられ自分の背に腕が回っていることさえも忘れていた。しかし、そのどうしようもなく寂しく、耳について離れない彼の声にその腕をほどくことはできなかった。
『………とりあえず、どこか入りましょうか。』
彼の返答に少なからず驚きはしたものの、人通りが少ないとは言えないこの往路では何をしても周りからの視線が集まってしまう。
さすがに、いつまでもここで抱擁を受け止め続ける余裕は私にはないため彼への提案としてこの言葉を発した。
彼の頬に透明な何かが伝ったのはおそらく見間違いではない。