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君に十進法

第1章 拾いもの



_____真っ白な君を、きれいなあなたを、私の色で染めたいなんて言わないから。もう少しだけ、あなたの色に触れさせて…


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12月上旬。冬の寒さも本格的になってきた今日この頃。私はその日の仕事を終えて帰路についていた。

(さすがにコート一枚羽織っただけじゃ寒いな…)

真冬と言えるこの季節。私のコートの中はというと、淡いピンクのシフォンシャツに膝上丈のプリーツスカート、足元は縦にラインの入った黒のタイツにシンプルなパンプスといった感じだ。

その他の防寒着なしではさすがに寒いと感じているが、特に見せる人もおらず、外出といえば仕事場と自宅の行き来のみのため、なかなかショッピングに出向こうという気が起きないのだ。


それにしても、昨晩降った雪のせいだろうかいつもに増して寒く感じる。自宅へと向かう足は徐々に早くなる。

雑然とした人混みの中を、ひたすらに歩いて行く私の目線の先を白い何かが横切った。

(…雪だ。)

雪が降ってきたのだ。昨晩降った雪がまだ溶けきっていないのに、などと考えるのも束の間。白く冷たいそれを認識した瞬間、より一層厳しい寒さが身を襲う。

その時だ、ひとつ身震いをして帰路を急ぐ私の視界の端に白い何かが映り込んだのは。

「えっ…?」

気のせいだろうか。気のせいではないことを理解した上での自問だ。しかし、もう夜も更けゆく時間だ。こんな時間にこの何もないだだっ広い空き地に、この一面真っ白な地に何かがいるはずがない。

そう自分に言い聞かせ、もう一度、今度は自分の意思で"売地"の看板のある方へと視線を向ける。

_____ガサッ…

不審な音は未だに耳へと届いているが、見る限り一面真っ白で特に何があるわけでもない。

やはり何かの聞き間違いか、はたまた日頃の疲れが幻聴を呼び起こしたのか。そんなことを考え、再び帰路へとつこうとした瞬間…


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