第1章 プロローグ
もう、何度目だろう
この世界を終わりにしようーー
そう思ってここに来たのは
眼下には車道と豆粒くらいの人々が世話しなく行き交っている
程よく強い風は、私の髪をかき乱し、私の後ろにあるフェンスを揺らす
耳障りな金音が風に合わせて鳴り響く
死にたいと思ったことはこれが初めてではない
ただ生きたくないだけだ、特別な理由などない
ただ、この陳腐な生に嫌気がさしただけだ
そう、ただそれだけのこと
一歩、足を踏み出す
支えを失った右足は、重力に従い下を目指した
それに身体を預け、途端全身に激しい風を感じる
終わるのだ
これで
私は安堵に似た落ち着きを感じ、そっと眼を閉じた