第5章 松本潤の場合。
「溝内くん!杏ちゃん!飲みに行くよ!」
ADの溝内くんと音響の杏ちゃん(24)を呼び止め、強引に連れ出そうとする。と、溝内くんがやべ、という顔をした。
「溝内くん、今顔に出たよね?出しちゃったよね?」
「あ、いや、ちがっ!」
溝内くんの隣で笑う杏ちゃん。実はこの2人、最近付き合い始めたばっかりだ。…この私がまさかのキューピッド。なぜ人の恋路は上手くいくのに、なんて自分が一番わかってる。
「誰のおかげで杏ちゃんと付き合えてると思ってるの?」
このセリフは溝内くんにとって痛いものだと知っているから、わざと使う。なんて悪い先輩なんだ。
「もちろんさんです!」
まるで兵隊のように直立不動の溝内くん。
「…て、うそうそ。2人で予定があったんでしょ?」
杏ちゃんにそう聞くと、照れたように「はい、」と笑う彼女。…可愛いなあ、もう。付き合い始めた2人の邪魔をするほど、私も性格が悪いわけではない。
「溝内くん、いっつも邪魔してごめん!2人で楽しんできて!」
「や、さん、俺行きますよ!」
杏ちゃんも、どうぞどうぞと笑顔で言う。ほんとこの2人は…いい子達だ。
「うんん!今日私もデートだったこと忘れてた!」
「ええ!?さん彼氏いるんすか!?」
「…杏ちゃん、溝内くん殺っといて。」
「了解です、さん。」
「え、なんで、ちょっとさあん!」
叫ぶ溝内くんを無視し、会場を後にして携帯を取り出すと、メール受信ランプが点滅する。
from:アンドリュー
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今日も君は輝いていたね。
後ろ姿ですぐにわかったよ。
昨日の君の香りが忘れられなくて
夜も眠れない。
ねえ、今から会いに行ってもいいかな。
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て、アンドリューかよ!いや、うそ、うそよアンドリュー!でも今はダメ!家、いないから!今から飲みいくから!アンドリューは私が今はまっている恋愛ゲームの王子様。ただ…アンドリューとは飲みに行けない。
唯一の心の拠り所である携帯(アンドリュー)をしまって、いつもの居酒屋さんへと足を運んだ。