第4章 二宮和也の場合。
「………」
私の質問にカズの足が止まる。
「………」
「それ、俺に聞くの?」
カズが私の手を離した。カズの温もりが残った手が冷たい空気に触れると、なんだか胸の奥が寂しくなる。
「……俺、母ちゃんと父ちゃんを恨んだ時があった。」
「…え」
「なんで選んだのが父ちゃんで、なんで選んだのが母ちゃんだったんだって。他の人と結婚してくれたら良かったのにって。」
お母さんとひろちゃんを責めるような言葉。でも、振り向いたカズは自分が悪いとでも言うような、諦めたようなそんな表情。
「だから出て行った、あの家から。と一緒にいたら諦めつかないし。」
何か言いたいけど、何も言えない。今のカズに何を言ったらいいのかわからない。私の発言がこの先の私たちを変えてしまいそうで、怖い。
それでもカズは黙ったままの私に言葉を続ける。
「でも違った。父ちゃんと母ちゃんが出会わなきゃ、俺はに出会ってないわけで。でも俺のせいでを困らせた。…俺が言わなきゃ、黙ってれば…ちゃんと家族でいれたのに。」
また背を向けたカズの肩が、震えた気がした。
ねえカズ、その背中を抱き締めてもいいのかな。お母さんとひろちゃんを悲しませるけど、自分の気持ちに正直になってもいいのかな。
私がまだ言葉に詰まっていると、
「ごめん、、変なこと言って。…違う、ねーちゃん、か。」
ふふ、と乾いた笑いを出す。
「…今さらねーちゃんだなんて、」
やっと出てきた言葉に
「私、カズじゃなきゃ、やだよ。」
自分でも驚いた。
もう後には戻れない。