第4章 二宮和也の場合。
新しく父になる男性は紳士的で明るい、とても素敵な人だった。
「初めまして、ちゃん。お父さんだなんて無理に呼ばなくていいからね。そうだ、ひろちゃんって呼んでほしいかも!」
人より少しネジが外れてはいたが、それはそれで楽しかった。今思うと、新しい家族に嫌な気さえしていた私には、ひろちゃんが丁度良かったのかもしれない。
「ほら、和也、挨拶して。新しいお姉ちゃんだよ。」
ひろちゃんが私よりも明らかに年下の男の子を私の目の前に押し出す。
「……え、」
「ちゃん、僕の一人息子の和也です。今小学6年生。」
聞いてない。私に弟ができるなんて。
ひろちゃんに合わせていた視線をもう一度、男の子へと向けた。小学6年生にしては小柄で、坊主に近いくらい短い髪の毛。不安そうなその顔は、なんだか豆しばみたいで可愛かった。
そんなことを思って男の子を眺めていると、嫌な気がしたのか、目を細められた。なんていうかまあ、決して私のことが好きではなさそうだ。
「…か、ずなりくん、はじめまして。」
「……はじめまして。」
お、喋った。しかめっ面でも、まだ声変わりしてない高い声がなんだかそれを可愛いと思わせる。
「仲良くしてね?」
「…ん、いいよ。」
初めて会った時から和也は生意気で、少し可愛かった。