第1章 大野智の場合。
彼から電話があった約束の夜。また私の携帯が鳴る、それは彼だけの着信音。
そんなことして、こんな歳でしっかり恋して、また同じ人を好きになって。ああ、なんてバカな私。
そんなことを思う暇もなく、鳴り続けている携帯に手を伸ばした。
「もしもし!」
『あ、ちゃん?』
いつもと変わらないふんわりした声。
そう言えば大野くんはいつから私のことを名前で呼ぶようになったのだろう。
『おーい、!』
「は、はい!」
『大丈夫?調子悪いなら今日やめとこっか?』
「ううん!だいじょうぶ!」
『そ?よかった』
よかった、その言葉をいいように捉える私に、誰かバカって言ってください。