第5章 松本潤の場合。
「美人で仕事も出来きる。気が強いくせに、こういう雰囲気になると一気に自信喪失するさんを可愛いと思う。」
可愛いなんて、こんな私に今まで誰が言ってくれただろう。松本くんの声はアンドリューになんてかなわないくらい、甘くて、気を抜くと私なんて一瞬で溶けてしまいそうだった。
「…今もまた、優しく触れたいって思う。今すぐ俺の、俺だけのものになって欲しいって独占欲が強くなる。
さん、俺、その人が相手でも引かないよ。ちゃんとさんの口から断わられるまで。」
松本くんの宣戦布告は最初よりも威力が増していた。
「…いや、あの、松本さん…」
「…なに、」
「…これ、どうぞ。」
私は自分の携帯を差し出した。画面はアンドリューからのメールの数々。
「…アンドリューって、」
私が見せたのは、ブロンドロングヘアーに王子様衣装を身に付けたアンドリューが吹き出しマークから「今日のケンカは意味のあるものだった。でも僕は…あんなに君を傷つけた自分が許せない。君を想うと苦しいんだ。」と切なそうに言う。
「アンドリューってね、恋愛ゲームの主人公だよ。」
画面を見つめる松本くんの顔が段々と赤くなる。
「…うそでしょ、マジかよ。」
「うん、それが松本くんがライバル意識していたアンドリューだよ。」
「…さん、今、面白がったでしょ。」
と口を尖らせ、赤い顔した松本くんは全然怖くない。
「…ふふ、ごめんなさい。」
嬉しくて、喜んでごめんなさい。
「んなもん、勝てるわけねーじゃん!」
と叫ぶ松本くんは益々可愛くて、つい笑顔がこぼれる。
アンドリュー、ごめんね。あなたより私のことを好きだと言ってくれる彼のことを、もっともっと知りたいと思う私がいます。松本くんなら、信じてみてもいいんじゃないかって、頑丈だった私の鍵が開けたり閉めたりを繰り返す。
私の鍵が開く時は、一体いつなんだろう。