第33章 夏はご用心/忍足侑士
青い空
白い雲
夏らしい日差しの中、小脇に本を抱え
颯爽と歩いているのは【歩くエロボイス】
忍足侑士くんですね。
(今日は、オレの大好きなラブロマンスの新刊発売日やったからな)
(はよ家に帰って読みたいわ)
どうやら彼は買った本が早く読みたいようで、寄り道などせずに真っ直ぐお家に帰りましょう。
「ん?」
風に乗って聞こえてくる声にふと足を止めて
とある一点を凝視しています。
誘われるように歩きだす侑士くんですが
メガネの端がキラリと光ったのを私は見逃してないですよ。
しかも聞こえてきた声といい
聞こえてきた場所って……公園だと思うんですけど?
「ええなあ。ほんまに夏ってええよな」
にやにやとする顔を抑えるわけでもなく
公園のベンチに腰を下ろす侑士くん。
軽く足を組んで頬杖をつく姿は、誰が見ても
イケメン。
その証拠に若いママさん軍団が、チラチラと
侑士くんを見ていますもん。
そんなママさんたちの視線など興味がないのか、彼の視線は噴水に釘付け。
噴水には小さな子供たちが、愉しげに水遊びをしていますね。
「ほんまに可愛いなあ……」
ゆ、侑士くん?
目尻を下げて笑うのはやめて下さいよ
「可愛いあんよがめっちゃあるで……」