第1章 幼馴染
『とりあえず風呂行ってこいよ。』
「はーい!
あ!絶対覗かないでよね?!」
そう言いながら葉月は
気を使う素振りもなく
当たり前のように風呂へ向かう。
葉月とは小さい時から
ほとんど毎日一緒にいて
お互いどんな友達より
信頼し合える仲だった。
高校生にもなると
やっぱり恋だの彼氏だのって
俺に毎回相談してきた。
今もそう。
そして今日もそれ関連だ、
絶対。
寝るまで読んでいた雑誌や
出しっぱなしにしてあった服を
片付けながら
葉月の出てくるのを待つ。
ー30分後ー
「ふー、さっぱりさっぱり!」
と言いながら勝手に冷蔵庫を開け
俺の買ってきたビールを
なんの躊躇いもなく
腰に手を当てて飲んでいる。
『で?今日はなんなの。』
風呂上りのビールを
幸せそうに飲んでいた表情から一転、
今にも泣きそうな顔で
俺が座ってるソファーの
斜め前にぺたっと座った。
「あたしってそんな魅力
ないのかな…?」
『なんで?』
「いっつも絶対フラレる。
特に意味もなく。」
『お前の良さを
そいつらはわかってない
だけなんじゃねーの?』
「ねー、宏光から見た
私の魅力ってなに?」
俺は固まってしまった。
こいつの魅力…
そんなの俺が一番知ってる。
料理がうまい。
ちょっと抜けてる。
なのに常識は
ちゃんとしてる。
人の話を親身になって聞く。
負けん気が強いくせに
人一倍寂しがり屋で
そんなとき優しくすると
とてつもない笑顔で
応えてくれる。
言い出したらきりがない。
黙ってる俺を見て
「やっぱないのか…」
落ち込む葉月を見ても
これを言葉にすることが
なかなかできなかった。