第22章 母
横山は、一体の人形を握りながら
勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
その様子を村上は見ると、不思議そうに近づきながら
自分も一体の人形を手に取った。
村上「俺らにもちゃんと教えてくれないか、
なんか、イライラしてくるわ」
そう言うと、
持っていた人形を強引に横山に渡した。
突如、自分たちの背後から人の気配を感じ、
三人は一斉にふり返った。
そこには、黒いフードをかぶった女が
無言で立っていた。
その女を見て、
丸山は身体の震えを抑えられなくなった。
横山は丸山の様子に気付き、
少しづつ丸山の方へ足を動かし始めた。
異様なほど、緊張が高まっていた。
その時、フードの女の口角が上がり、
いやらしく笑った。
「良くここが分かったと褒めてやりたいが、
これぐらいしてもらわないと、
こちらも面白くないんでね」
女は、ゆっくりと入口から部屋の中に歩き始めた。
横山「そう言いつつ 、
内心、あせってるんとちゃうんか?」
横山は丸山の前に立ちはだかり
女の姿が見えないようにした。
その横山の様子を見て、女は
「お前らみたいなガキには用はない。
昔は、お前らの後ろにいる純血が必要だったがな」
横山は
後ろで青くなっている丸山を見た。
女はフードを静かに取った。
女の顔を見ると、
丸山の瞳は一瞬で深紅に変わっていった。
丸山「..お前が、俺の母さんを...」
その時だった、
村上が
側にある人形の一体を女に向かって投げつけた。
女が人形を避けようとして身体を動かした時だった。
渋谷「今度こそ、ほんまにゲームオーバーやな」
そういうと女の首に腕を回し、捕まえていた。
横山「吸血鬼を舐めてた、
あんたの負けって事や」
そう言うと静かに女に歩み寄った時
女は大きな高笑いをすると、
また砂にかわってしまったのだ。
渋谷「ちっ、おい、またかよ!!」
横山は、
自分の足元に広がっている砂を
黙って見つめながら、
自分の手を強く握りしめ、
感情を抑えようとしていた。
相手を理解できない
もどかしさに似た怒りのような感情を。