第8章 2-第四話
剛さんは比翼院という身寄りのない子供が住む所の出身なのだ。
そこに居る子供は主家の子、つまり匡様と皆、兄弟になる。もちろん比翼院の子供同士も兄弟。
剛さんは比翼院の子の一人、すみれに恋心を抱いていた。兄弟でも他人なのだからそれは自由だ。
でも剛さんは決してその想いを伝えようとはしなかった。
そしてすみれは匡様が姫様の所に行った頃、郷を出て人間の男と暮らし始めた。
そんな剛さんを私はずっと見てきた。私も一応主家の子なので兄弟だ。でも剛さんの事をお兄ちゃんなんて思った事はない。もっと他の、言葉では表せない複雑な気持ち。