第5章 六年前
「悠!久しぶり~誕生日おめでとう。」
桃と悠はいつもどうり山の中でこっそり会っていた。
「久しぶり…ってまだ一ヶ月も経ってないじゃん。」
あれから四年経ち、村も元通りになった。
「だって…前は二週間に一回は絶対会ってたもん…寂しかったんだよ…。」
天狗の郷ではちょっとしたことがあった。
「ごめんね、匡様が色々あってさ。」
「ねぇ、そんなことより今日、家に来て!パン焼いたの。匡さんとか令さんにも食べてもらいたいんだ。」
桃の機嫌はこの上なく良かった。
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それからの記憶は桃には無い。
「…っ…鵺…!」
村は全体が燃えていた。人々は次々に殺され、誰も残っていなかった。
「まだいたぞ、殺れ!」
こっちに向かって来た。
「桃、飛ぶよ。」
とにかく逃げた。この人数に一人では絶対勝てない。
「いやぁ…っ」
高所恐怖症の桃には耐えがたい状況だった。
「ちっ…天狗がなぜ此処に。まぁいい他に隠れている奴を見つけたらすぐ殺せ!」