第4章 十年前
「うん、絶対に。大人になったら結婚しようね。」
二人は本気だった。
「あら、その約束聞いちゃったわぁ。本当に結婚してくれるんでしょうね、悠君?大歓迎よお母さんは。」
お母様がいきなり入ってきた。
「お母様。まあ!スコーンですか?ありがとうございます。」
スルーした。あの質問を華麗にスルーした。それよりも桃がお母さんに敬語を使っていることが気になった。
「ねぇ悠君?本気かしら。跡継いでくれるかしら。」
でもお母さんはスルーしなかった。
「はい、彼女がその気なら。何年後になるかわかりませんけど…」
この言葉もすらすら出てきた。
「うん、任せられるわ。家の娘を末永くよろしくね。」
このときようやく気付いた。匡様のお母様、ゆり様に負けない美貌を桃のお母さんは持っていた。
「はい、任せてください。」