第8章 失われた記憶
「ついさっきまでのユリは、もういねぇんだよ......。」
そう、もうあのユリはいない......
俺との記憶が、全部失くなってんだからよ......。
「......北山、諦めんのはまだ早いかもしんねぇ......」
「はっ...どういう意味だよ......
アイツの言ったとおり、ユリは俺のこと......」
「忘れたってか?」
「......あぁ。」
「確かに、ついこないだまでの思い出は失くなっちまったかもしんねぇ......けど、
今から作る、そう思うことはねぇのか?」
「は?」
「今のユリちゃんは確かに、お前を拒絶している......
でも時間をかければ、お前と仲良くなれるんじゃねぇか?」
「藤ヶ谷......」
「そうだよミツ......あれはユリちゃんのたまに来る反抗期だよ......。
ガヤの言うとおり時間をかければ、また前みたいな日常に戻れるよ(微笑)」
「タマ......」
時間をかければ、また前みたいに戻れる......?
「何を馬鹿な事を言っている......いくらユリに呼びかけようと、
お前達の声は届かない。
さっきのユリの行動を見ただろ?
ユリはもう、お前たちを受け入れない......
それが現実だ。」