第39章 〈ロー〉お誕生日おめでとう、キャプテン!
「船長」
わたしは自分の部屋の椅子に座っている船長に後ろから近づいた。
「何だ?」
船長は本に目を通したまま、わたしに返事をした。
「もうすぐ12時ですね」
机の上に置いてあった時計を見ながら話しかける。時計の針は夜11時58分を指している。
「そうか」
ただ、素っ気ない返事が返ってくるだけだ。ーーそれでも別にいいと思っている。
「船長」
ーわたしはあなたのことが好きだけど……きっと、あなたは違う。ーーそれでも、目の前にいるあなたを……。
時計の針は11時59分を指している。
「船長」
わたしは未だに本を読んでいる船長を後ろから抱き締めた。
「お誕生日おめでとうございます」
そう言って、彼から離れた。
「じゃあ、おやすみなさい。船長」
船長の部屋を去ろうとした。しかし、腕を引かれて後ろに倒れた。衝撃はない。誰かが支えてくれた。そして、ベッドに投げ飛ばされる。ベッドの柔らかさでどこも痛くはない。だが……。
「おい」
目の前に顔のいい男がいる。どうしてこんな事態になっているのか……。
「船長?」
「お前、1分早い」
「え?」
時計を見てみると、今ちょうど12時を指していた。