第29章 〈ONE PIECE〉とあるモブ女の心情
配役が発表され、主人公に決まったモンキー・D・ルフィは『ASL』としてアイドル活動をしている。それも、私にとっては気に食わなかった。アイドルがドラマの主人公? よくある話だが、どうせやるのであれば実力のある俳優さんを起用してほしかった。アイドルが実写映画の主人公に抜擢されたことで、散々な結果になってしまった作品をよく見かけたからだ。
しかし、尾◯先生が脚本を書くということもあって、当時の私は内容がとても気になっていた。また、原作の小説では東の海までの物語しか書かれておらず、〈偉大なる航路〉に行った後のお話は全く書かれていなかった。果たして、あの小説の主人公はどんな冒険をしたのか……〈ひとつなぎの大秘宝〉は手に入れたのか……。
実写化が嫌だという感情よりも、話の内容が気になる好奇心に負けた私は結局ドラマを見てしまった。すると、そこには紛れもなく、幼い頃に読んで想像していた『ONE PIECE』の世界が広がっていた。
ルフィが海を進む度に、自分が彼の仲間になった感覚で一緒に冒険をしていた。気が付いたら、次の週もその次の週も内容が気になって見てしまっていた。
「ナミ!!! お前はおれの仲間だ!!!!」
主人公が航海士の女の子を正式に仲間に入れるシーン。小さい頃の私は何度も何度も、自分がここで主人公の仲間になることを妄想した。それが画面の向こう側で、素晴らしいクオリティで繰り広げられていた。