第25章 〈キドル〉おれのものになればいいなんて
「食うか?」
「いいのか!?」
少年は目をキラキラさせて、よだれを垂らした。
「汚ねェな。食っていいぞ」
キッドは少年の口元をお手拭きで拭きながら言った。
「ありがとう! いただきます!」
麦わら帽子の少年は手を合わせると、フォークを持ってお皿の上にあるお肉を片っ端から食べ始めた。
「……」
その様子を見ながら、赤髪の男は目を細めた。
(惚れた弱みってやつか?)
ーこの気持ちはきっと、シャボンディ諸島のオークションハウスの前で共闘した時から芽生えた感情だったのかもしれない……。
ーふーん、でも、〈ひとつなぎの大秘宝〉はおれが手に入れるぞ。
ーーシャボンディ諸島で共闘した後に言われた言葉。この一言でおれはお前をさらに意識した。
「うめェ!」
口いっぱいに肉を頬張っている麦わら帽子の少年を見て、キッドはフッと優しい笑みをこぼした。
「おい、ついてんぞ」
少年の汚れた口元を再びお手拭きで拭く。
「ん、ありがとな!」
「あァ」
海賊とは思えない無防備さと屈託なさで笑う彼に対し、赤髪の男は机に肘をつき、手を顔に当てた。
その後も机の上にある料理を食べ続ける少年を見ながら、キッドは目を細めた。