• テキストサイズ

【ONE PIECE】海を巡る者たち

第16章 〈エース〉炎のあなたは


 エースは思わず息をのんだ。
 月明かりに照らされたリーネの瞳は酔いで潤んでいるはずなのに、妙にまっすぐで逃げ場がなかった。

「……リーネ、そんなこと酔って言うなよ」

 黒髪の男は困ったように眉を下げて笑う。けれど、その耳の先が少し赤い。

「ほんとのこと言ってるのに〜」

 頬を膨らませて、リーネは彼の胸に手をついた。彼女の少し温かい体温に、エースの喉が一瞬だけ鳴った。

「……まったく、お前ってやつは」

 エースは軽く頭をかきながら、リーネの肩に手を回す。
 その手は優しく、でも逃がさないように少しだけ力がこもっていた。

「ありがとな……でも、そんな風に言われると照れるんだよ」

 月光の下、彼が微笑む。
 炎のような強さを持つ男が、今は夜風に溶けるほど穏やかな顔をしていた。

「俺がかっこいいかどうかはともかく……お前にそう見えてるなら、それでいい」

 リーネはぼんやりとその声を聞きながら、眠気に引きずられる。
 次第にエースの胸元に身体を預け、まぶたが落ちる寸前――耳元で、低い声が囁いた。

「……俺にそんな顔、他のやつに見せんなよ」

 胸の奥が、酔いよりも強く熱を帯びた。
 けれどその熱の正体を確かめる前に、女はエースの腕の中で静かに眠りに落ちていった。
/ 215ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp