第16章 〈エース〉炎のあなたは
夜、空には大きな満月が顔を出している。ここは白ひげ海賊団、モビー・ディック号の上。甲板には船員たちがおり、床の上に座って酒を呑んでいる。
「エース〜」
1人の女の子がエースの隣へとやって来た。酒をたくさん呑んだのか、かなり酔っている。
「リーネ、どうした? そんなに酔うなんて珍しいな」
「んー?」
リーネと呼ばれた少女はエースの隣に座り、彼に顔を近付けた。
「お、おい……」
「エースってー……」
呂律が辛うじて回っている状態で、ニコニコしながらエースに話しかける。
「本当にカッコいいよね」
「……は?」
エースは言われた言葉に驚き、目をパチパチとさせた。
「は、はァ!? いきなり何言って……」
「んー? だってー……」
リーネはエースの目の前に移動して、真正面から彼に顔を近付ける。
「黒髪も、切れ長の目も……笑顔も、怒ってる顔も全部カッコいいし……戦っている時の姿もとってもカッコいいもん。今日もねー……」
回らない頭と口で精一杯言葉を紡ぐ。どれだけエースがカッコいいか、熱を込めて語っている。ーー本人に対して。
「特にね、十字架ってやる時はカッコ良かったな〜。空中で自由に身動きが取れないのに、ビシッと構えて技を繰り出すんだもん」