第8章 〈サボ〉どうして冷たくするの?
「じゃあ、後はお2人でごゆっくり〜」
コアラはサボの肩に手を置いて、イワンコフと食堂を出て行ってしまった。
「おい! コアラ!」
「……サ、サボ、あの……」
サボは食堂から出て行った2人を大声で止めたが、それを今度はレイが遮った。レイは顔を真っ赤にして俯いたままでいたが、勇気を出して口を開いた。
「え、えっと、あの……」
顔を上げたレイは涙目でサボに言った。
「わ、私も……サボのことが好きです!」
「……」
サボは面食らった顔をした。
「ず、ずっと、あなたに出会った時からずっと、好きでした」
食堂は静まり返る。レイの拳は震えていた。
「……おれも……」
サボはトレードマークの黒い帽子を少し目深に被って、息をついてから言った。
「自覚したのは最近だけど、ずっとレイのことが好きだった。ちゃんと伝えなくてごめん」
「ううん!」
レイは首を振った。
サボは椅子からゆっくり立ち上がって、レイの方へ歩みを進めた。そして、そっと優しく抱き締めた。
「もう、冷たくしないから」
「うん!」
ー不安なこと、辛いこと、これからもたくさんあるかもしれない。それでも……。
(この人と一緒にいよう)
ーそう、心に決めた。
〜好きな気持ちは
相手に伝えないとわからない〜