第8章 〈サボ〉どうして冷たくするの?
「おい」
ーどこかからか、声が聞こえる気がする。
「おい」
ー大好きな声だ。
「おい、聞いてるのか?」
ーいつも隣にいるのに、全く自分のことを気にしてくれなくて、なかなか聞くことができない声。
「レイ」
「……え……」
ー夢じゃ……。
「ない……」
「何がないんだ?」
レイの瞳に大好きな人の姿が映った。
「……サボ……」
「いつまで寝てんだよ。いい加減にしないと、風邪ひくぞ?」
「……」
レイは心の中でムッとした。
(誰のせいでわたしが寝たと思ってるのよ……)
レイは無言のまま立ち上がって、船内に戻ろうとした。
「おい、待てよ」
サボは何も言わずに立ち去ろうとしたレイの腕を掴んだ。
「……」
レイはその手を振りほどいた。
「……触らないで!」
その気迫に押されたのか、サボはすぐに手を離した。
「……ごめん」
「……」
レイは目に涙を溜めて、その場所から離れた。
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