第3章 Ⅲ お前のために
分かれ道に差し掛かったとき、ハルはピタッと立ち止まった
「・・・ハル?」
ぎゅっ
「・・・・・//!!」
ハルは何も言わずにただ私を抱きしめた
「・・・いだ。」
「え?」
「初めて誰かのために泳いだ。」
「えっ・・・」
ハルは体を離し、私の肩に手を置き、まっすぐ私を見つめた
ハルの青い瞳に私が映っているのが見えた
「俺はフリーしか泳がない。」
「うん。」
「誰かのために泳いでるわけでもない」
「うん。」
「でも今日は・・・」
「・・・?」
「お前のために泳いだ。」
「私のために・・・・?」
「・・・・・//」
言ってから恥ずかしくなったのかハルは顔を赤くさせて
ふいっと顔をそむけてしまった
「ふふっ」
ちゅっ
私はそっとハルの頬にキスをした
「・・・!!///」
ハルはさらに顔を赤くさせて私の方を向いた
「ありがとう。お礼・・・的な?えへへ・・//」
「・・・・。ダメ、やり直し。」
チュッ
「・・・・・!」
気づいたときにはハルの顔が目の前にあった
唇に広がった柔らかく、温かい感触・・・
ハルが私にキスをしたと気づくのにそう時間はかからなかった
きっと今の私の顔は真っ赤だろう
恥ずかしいような、くすぐったいような
でも真っ赤なのは私だけではない
ハルも耳まで真っ赤になっていた
キスしたのは自分なのに・・・クスッ
「じゃ、じゃあな、・・・また電話する。」
「うん。またね。」
そうして私はハルと別れ、寮に向かった
「・・・・・てか、ハルとキスしちゃった・・・!」
ハルの真っ赤になった顔を思い出すと、胸がきゅんと熱くなる
不器用なハルにしては上出来だね・・・ふふっ
私は振り返り遠くにいるハルの背中に向かって小さくつぶやいた
「好きだよ、ハル。」