【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
河川敷のグラウンドでサッカーをする姿を見かけた時、そのキラキラした笑顔に見惚れた。
学校も違えば、住んでいる町も違う。
貴方と私、二人を繋ぐものは何もない。
だから、毎週土曜日の午後3時。
貴方が友達と楽しそうに笑っているのを見たいがため、散歩という名目で隣町から足を伸ばしていた。
「おい、上がれって言っただろうが!」
「ッザけんな! てめぇがちゃんと足元にボールを出さねぇのが悪いんだろ!」
最初はみんな仲良くプレーをしているのに、だんだんヒートアップして、 時には掴み合いのケンカに発展することもある。
でも、次の瞬間には、また笑いながら一緒にボールを追いかけている。
あぁ、男ってバカだな。
でも・・・いいな・・・
土手に座り、体育座りをしている膝の上にアゴを乗せた。
まだあちらこちらに雪がのこっているし、北風だって吹いているのに、貴方の頬は真っ赤。
額には汗が滲んでいる。
「風邪を引かないでね」
と、呟いた時だった。
「ぶぇっくしょい!!」
突然、背後で大音量のくしゃみが聞こえ、心臓が飛び出るかと思った。
振り返ると、鼻水を盛大にすすり、ダルそうにしている赤毛の男。
真っ黒なニット帽から編み込んだ、真っ赤なロン毛が垂れている。
迷彩柄のダウンコートに皮パン、チェーンを腰にジャラジャラぶら下げているその姿は、まさに怪しい人だ。
「よう」
ヤバい、目が合ってしまったと慌てて顔をそむけた時はすでに遅し。
何故か人懐っこい笑顔を見せてくる。