第1章 +1
あいつ、止めとけって言ったのに告って振られたらしい。
部活終わりにたまたま通りかかって見ちまった。
泣き崩れるあいつと潰れた箱を見れば誰にだって何が起こったのかわかる。
俺はあいつと幼稚園から一緒で、いつも気付けば隣にいる幼馴染ってやつだから、今回の件も本人からなんとなく聞いてたんだ。
好きになった。告白しようと思うって。
俺は咄嗟に止めた。こいつが好きになった男は遊んでる奴だって知ってたしな。
でも聞かなかった。
そして今これだ。
体育館の影に隠れて泣き崩れるあいつの声だけを聞いていた。
姿は見れない。すぐに慰めに行っちまいそうだから。
今あいつの隣に行って、俺に何が出来るってんだ。
「…クソが。」
力なく呟いて静かにその場を離れる事しか出来ない自分が悔しかった。