第1章 1
高校で再会してから数週はお互いよそよそしくしていたが、家が近いのでそれも次第に緩んでいった。
桜が散るころにはもう互いの家に行き来するようになっていた。テスト前には一緒に勉強し、どちらかの親の帰宅が遅いときは一緒に食べることもあった。
いつから友情が愛情に変わったかなんて思い出そうとも思わない。
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「さん、ってさ、黄瀬君のなんなの?」
ふわふわと揺れる巻き髪、細くて長い脚、小さな顔。どれもにはないものだった。グロスでてかてかと光る唇からこぼれる言葉は想像もできないくらい辛辣だ。何を言っても納得しないだろうから正直に言う。
「ただの、幼馴染」
「なにそれ、嘘でしょう」
取り巻きから声が上がるが、予想どおり納得しなかった。
もう私はあんなに綺麗に、強くしなやかに変わった幼馴染のことなど知り得ないのに
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まさかあんなに嫌そうに幼馴染、と吐き捨てられるとは思ってもみなかった。もしかしたらがすきなひと、って言ってくれるのを期待していたのかもしれないけど、甘かった。
この気持ちはの迷惑になるうえに、何も産みはしない。