第25章 【結局のところ】
一大事だ。
まず日向と谷地と山口がひいいいいっと叫んで高速で後退った。
東峰は青ざめて硬直、田中が影山早く謝れとまともな助言、西谷は力が激怒りだやべぇっやべえっと騒ぎ、菅原はああもうっ馬鹿っと片手で目を覆い、木下と成田は縁下やめろってそれが駄目なんだよと諫(いさ)めようとするが効果なし、月島はなにこれ俺が誘発したことになるのと引きつった顔、清水は乏しい中にも僅かに今のはよくなかったと影山に言いたそうな顔で事の成り行きを見守り、澤村はため息をついた。
「影山。」
力は無表情でゆっくり後輩を振り返った。
「は、はい。」
影山は自分が先輩の地雷を踏んだらしいことだけは理解して冷や汗を流し震えている。
「誰の妹が可愛くないって。」
力はここで笑って言ったが目が笑っていない。
「いや俺は別にっそーゆー意味じゃなくっ。」
影山も気がついていて汗だくになる。
「まあしょうがないけどな、あいつ顔はあれだしいわゆる女の子の話し方じゃないしスイーツよりデジタル素材集につられるしスマホケースには気を使うくせに自分のお洒落には無頓着だし。だけどそんなにひどいかい。」
畳み掛けられた影山はうっと唸って顔色を悪くするしかない。力はここで影山に背を向け、代わりに眠ってしまった義妹の方を見ながら
「うーん、髪飾りでもつけてやった方がいいかな。」
いつものおとなしい調子に戻って呟いた。命の危機を感じるレベルまで緊張したらしき影山はすんませんでしたと言いながらへたりこむ。力はそれを横目でちらっと見て流石にやり過ぎたと思う。
「ごめん、やり過ぎた。」
影山に手を貸してやりながら力は言った。
「あれでも妹だと思ってるからつい。」
「難しいことはよくわかんねえっスけど」
影山は気を悪くした様子はなく言う。
「縁下さんがあいつが大事で、及川さんに弄られたくないのはわかりました。」
「それで充分だよ。」